第三回 職人のドラえもんポケット「腰袋」
不思議でかっこいい「腰袋」
皆さん、お元気ですか?アールK建築の見習い社員アールです。
皆さん「腰袋」(こしぶくろ)って知っていますか?
大工以外にも、クロス屋さん、電気屋さん、左官屋さん、サイディング屋さん、屋根屋さん、などなどいろいろな職人さんがいます。職人さんは、仕事をしているときに必ず腰のあたりにポケットがたくさん付いたベルトのような袋のようなものをぶら下げていますよね。そう、あれが「腰袋」です。(実は僕も「腰袋」という呼び方をつい最近知ったんです。)
職人さんは仕事をしているとき、「腰袋」からいろいろな道具をまるでドラえもんのポケットのように取り出します。しかも、振り返りもせずに自分の腰につけた「腰袋」にさっと手を伸ばして、必要な道具を的確に取り出し、またパシッと元に戻します。そう、職人さんは何がどこに入っているかを完璧に体で覚えているので、振り返ったり、いちいち目で確認しなくても自動的にこれができるんですね。
うーん、これがまたかっこいいんですよねー。それに、いったいどんなものが入っているのだろうって俄然興味がわいちゃいます。
というわけで今回の「The職人」のテーマは「腰袋」です。
「腰袋」いろいろ
ひとくちに「腰袋」といっても呼び方も、腰つり袋、釘袋、ツールケース、工具さしなど、形や収納方法、収納するものによって異なり、また、素材、色、収納場所の数、装着方法、洋風か和風か(?)、などによっていろいろなタイプがあるようです。
「腰袋」は職人さんによってみんな違う形だったり、大きさだったり、入っているものも違います。さらに同じ仕事の職人さんでも、入れるものや入れる場所は人によって様々で、自分が効率的に仕事ができるように、みんなとってもこだわっています。
(いやー、寡黙な職人さんのそんなこだわりもシブいですね)
一例として、神成の「腰袋」をご紹介しましょう。
複数のポケットで仕切られており、正確な作業のためにいろいろな道具が入っています。また作業を効率よく行うためにそれぞれの道具の収納場所はきっちり決まっています。結構重いので、耐久性のあるしっかりした幅の広いベルトで、腰に負担がかからないような工夫もされています。
中身について右からざっとご紹介をすると、
・インパクト(穴をあけたり、ビスを打つ充電式の電動工具。必要なときだけ腰に吊しています。)
・ドライバー(プラスとマイナス)
・げんのう(カナヅチ)
・バール(釘を抜いたり、テコに使う)
・ビット類(インパクトの先端に付ける直径が異なるドリルや形状の異なるドライバーなど)
・スケール(巻尺です。寸法を測ります)
・墨ツボ(木材等に加工をするときのマークを付けます)
・ビス、釘類
・カッター2種
・ノミ2種
なれているとは言えこれだけいろいろなものが入っていると相当重そうですね。
次は電気屋さんの「腰袋」です。電気屋さんは、家の中の電気の配線などの電気工事を行うためのペンチ、ドライバー、カッターなどの道具を中心に「腰袋」に入れています。また、一度天井裏などの作業を始めると、いちいち中断して降りてくるのは大変なのでいろいろな場合に対応できるようにたくさんの道具を持っているようです。そのため電気屋さんの「腰袋」は自然と重くなり、この電気屋さんは腰に巻くだけではなく、肩からも吊って負荷を分散するタイプの「腰袋」を使っています。
3番目にご紹介するのはクロス屋さんの「腰袋」です。クロス屋さんは、壁や天井のクロスの張替えなどの作業を行うために、何種類ものカッターや地ベラ、角ベラ、スポンジ、ローラー、刷毛、テープ、コーキングなどの特殊なプロの道具を「腰袋」に収納しています。高いところでも常に手際の良い作業と、美しく正確な仕上がりが求められる繊細な仕事ですので、使いやすい「腰袋」はとても重要です。
このクロス屋さんは、必要な道具を使いやすいように「腰袋」の左右にきちんと振り分けて収納しています。
また、ご紹介した職人さん以外にも、美容師さん、植木屋さんなど、特殊な技術を持った専門家で、常に使う道具を腰に吊るしている職業はたくさんありそうですねー。ちなみに下の写真左は美容師さんのシザーズケース(ハサミケース)、右の写真は植木職人さんの腰道具です。「腰袋」ってまだまだ奥が深そうですね。
