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施工事例

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横浜山手 エリスマン邸改修工事

ご依頼の内容

エリスマン邸は、生糸貿易商社シーベルヘグナー商会の横浜支配人として活躍した、スイス生まれのフリッツ・エリスマン氏の邸宅として、大正14(1925)年から15(1926)年にかけて山手町127番地に建てられました。設計は「現代建築の父」といわれるチェコ出身の建築家アントニン・レーモンドです。

当時は木造2階建て、和館つきで建築面積は約81坪。屋根はスレート葺、階上は下見板張り(※①)、階下は竪羽目張り(※②)の白亜の洋館でした。煙突、ベランダ、屋根窓、上げ下げ窓、鎧戸といった異人館的要素をもちながら、軒の水平線の強調など、設計者レーモンドの師匠である世界的建築家F.L.ライトの影響も見られます。(緑の協会HPよりhttp://www2.yamate-seiyoukan.org/seiyoukan_details/Ehrisman/

今回のご依頼は、古くなったために傷んだ箇所を、当時の姿に復元するための改修工事です。私の担当は以下の工事です。

●バルココニー手摺改修工事。

●1階、2階床の一部改修工事(米松フローリング)

●階段手すり新設工事

作業概要

●バルコニー手すり改修工事

屋外で風雨にさらされていたため腐食がひどく、笠木(※)、格子(※)、天板(※)、隈柱(※)、押縁(※)など南側の手摺は全面的に作り替える必要がありました。

 

すべて当時の姿をそのまま復元する必要があり、笠木は長さが7000mmもある1本の木材を、指定された独特な形の断面に加工できる機械を探すところからはじまりました。

またフェンスの格子もバルコニー全体で同じ特殊な形のものが使われており、使用されている格子をすべて交換するために、全く同じ寸法の格子を50枚以上加工しました。

隅柱、天板、押縁などの他にも、当初計画にはなかったベランダ手すりと、土台となる部分との間に挟まれていた銅板も急遽新しいものに取り替え、当時と全く同じになるように復元しました。

●1階、2階床の一部改修工事(米松(※)フローリング)

床はすべて米松の無垢板を加工した現在の既成品にはない特殊な寸法の床材が張られています。今回の改修では1階と2階に床が凹んでいる箇所があるため、床板を剥がして新しいものに改修します。凹んでいる部分の床板を剥がすと、床の重さでわずかですが根太が曲がってしまっています。そこで、まず床にアスファルトを流し込んでから根太の改修を行います。特に1階は柱が少なくかなり長い根太で支えているため、曲がった根太の隣に太めの根太を抱かせて補強し、その上に米松の床板を張っていきます。

床板を張り終えたら、剥がしていない床の色と同じになるようにニスを塗って完成です。

●階段手すり新設工事

1階と2階をつなぐ階段に木製の手すりを設置する工事です。現在では木材の狂いを避けるために集成材(※)を使うのが一般的ですが、今回は無垢の木材を加工したものが指定されており1本の木材を加工して作らなくてはなりません。またその手すりを壁に固定するための金物(金具)も現在ではほとんど使用されることのない真鍮(しんちゅう)が指定されており、市販のものから合うものを探すために大変苦労しました。

   

 

 

 

工事を終えて

●今回のご依頼は、経年劣化により傷んだ箇所を“当時の姿に復元する”ための改修工事です。現在の既製品にはない素材や今では使われることのない技術などがあらゆるところで使われており、加工する機械や素材を手に入れるところから始めるという苦労の多い工事でした。

●しかし、現在では滅多に見ることができない素材や技術を自分の目で見ることや、触れることで、当時の建築家や職人の考えや思いに触れられたような気がします。

●苦労の多い工事でしたが大変勉強になりました。今後は今回経験したことをこれからの仕事に生かしていきたいと思います。

用語解説

※笠木

かさぎ。本来は架木(ほこぎ)と呼ばれるべき高欄の最上部の横材も笠木と総称されることが多い。笠木(内部木製笠木):笠木に用いる材料は、笠木を取り付ける壁などの仕上材と同じか、若しくは、金属製の笠木が用いられる。また、室内の階段や吹抜廻りに設ける手摺壁の頂部に、かぶせて設ける木製の部材も笠木という。

※格子

こうし。細い角材や竹などを、碁盤の目のように組み合わせて作った建具。戸・窓などに用いる。2 寝殿造りの建具である蔀 (しとみ) のこと。

※天板

てんいた・てんばん。カウンターや机、棚(箱物家具)等の最上面の板。

甲板(こういた)、トップともいう。また、「てんばん」とも読み、キッチンのフロアキャビネットの上に取り付けられた作業台のことをいい、ワークトップとも言われる。

※隈柱

すみばしら。管柱の一種で、建物の外壁ラインの隅角部(出隅・入隅)にある管柱。尚、隅柱で上下階を1本の柱で通したものは、「通柱」と言う。隅柱は、耐久性を上げるために4寸(120mm)角サイズが多く用いられる。

※押縁

おしぶち。板状のものの継目や端部などの隙間を隠したり、押さえのために取り付ける細い棒状の部材。

※米松

べいまつ。マツ科の常緑大高木。トガサワラ属。心材は黄色または赤褐色。針葉樹の中では重く強い。北米から輸入される主要木材で,梁(はり)・桁などの建築用構造材として多用される。ダグラスファー。アメリカトガサワラ。

※集成材

しゅうせいざい。ひき板または小角材の繊維方向をほぼ平行にし,長さ,幅,厚さ方向に集成,接着した材の総称。従来の木材と比べ,製材の際にでる派生材の再生利用が可能で,また加工により木材の節や割れ,目切れなどを除いて適切な強度の断面をつくりだせる,乾燥材の使用で材の狂いやゆがみが避けられる,長大材や曲げ材などの特殊形状の材をつくりだせる,などの利点がある。

横浜と聞いて思い浮かべるものは、元町、中華街、外人墓地、山下公園、崎陽軒など人によってさまざまだと思いますが、エリスマン邸を思い浮かべる人は少ないかもしれません。しかし外人墓地の隣にある白い西洋館、と言われれば「あぁ、あの建物」と思い出す人は多いと思います。かつては多くの外国船が寄港する横浜港のおかげで、早くから海外の文化に触れることが多かった横浜には、そのことを物語る歴史的建造物も、まだ数多く残っています。その中でも特に歴史的に重要な建造物は「山手西洋館」として公益財団法人横浜市緑の協会によって大切に管理されており、エリスマン邸もその一つです。

この度、そのエリスマン邸の改修工事という大変名誉なお仕事を大工としてやらせていただけることになりました。

エリスマン邸のあるこのあたりは港の見える丘公園や外人墓地、横浜山手聖公会などの他にも洒落た雰囲気のレストランやカフェなども多くあり、デートコースとして利用したことのある人も多いと思います。そういえば、夫婦で出かけることなど滅多にないのですが、珍しく二人で出かけた際に訪れた「ザ・ベスト・チーズケークス カフェ 山手店」(現在閉店中)もこの近くです。

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